申告後の仕訳 決算の締めくくりに残る一手間
決算処理が終わって申告書ができあがったら、それで作業は完了だと思っていませんか。
実は、消費税・法人税の申告書ができあがった後に、その内容を帳簿に反映させる仕訳が必要です。税理士に申告書の作成を依頼している場合は、この仕訳についても指示があるはずですが、経営者としては「決算の後にもう一段階、手順が残っている」ということを知っておくと、決算の全体像がつかみやすくなります。この手順自体はそれほど多くなく、金額さえ正しく仕訳できれば大きくズレることのない作業です。

このコラムでは以下の4点を整理します。
- 決算が終わったら、申告書の数字を帳簿に反映させる作業が残っていること
- 消費税の経理方式によって、差額の扱いが変わること
- 税効果会計は多くの中小企業には関係ないこと
- 経営者として押さえておきたいポイント
1 決算が終わったら、申告書の数字を帳簿に反映させる
決算整理仕訳が完了したら、次のような流れで確定申告の作業に進みます。
- 消費税の確定申告書を作成する
- 消費税の納税(還付)に関する仕訳をする
- 法人税の確定申告書を作成する
- 法人税の納税(還付)に関する仕訳をする
- (該当する場合)税効果会計に関する仕訳をする
申告書の作成そのものは通常、税理士が行う作業です。②④⑤の仕訳も、税理士から指示された金額のとおりに処理すれば大きく間違えることはありません。手順の数自体がそれほど多くないため、他の科目のように「残高が知らないうちにズレていく」というリスクは比較的小さい作業といえます。
2 消費税の経理方式によって、差額の扱いが変わる
なお、消費税については、税抜経理方式を採用している場合、帳簿上で計算していた消費税額(仮受消費税・仮払消費税)と、実際に申告書で確定した税額とがぴったり一致しないことがあります。この差額(「控除対象外消費税額等」といいます)は、原則として雑収入・雑損失として処理します(税込経理方式ではこの差額自体が発生しません)。まれに「繰延消費税額等」として複数年にわたって費用化する処理が必要になるケースもありますが、レアケースのため詳細は割愛します。
一方、税込経理方式を採用している場合は、決算時に未払消費税を計上せず、実際に納付するタイミングでまとめて処理する会社もあります。
なお、高額な資産を購入した場合など、経理方式にかかわらず通常とは異なる処理が必要になることもあるため、そうしたケースでは税理士に確認しておくと安心です。
3 税効果会計は多くの中小企業には関係ない
「税効果会計」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、導入している中小企業は多くありません。会計監査人を置いている会社や、中小企業の会計に関する指針に準拠している会社を除けば導入は義務ではなく、多くの中小企業では対象となる差異自体がほとんど発生しないためです。
ただし、赤字決算の際に赤字幅を小さく見せる効果があることから、任意で導入する会社もあります。ただし、赤字が実際に続いてしまうと、繰延税金資産の回収可能性に問題が生じ、計上できなくなることが多いため、導入を検討するなら「すでに赤字が続いているとき」ではなく「赤字になりそうなとき」です。自社に必要かどうかは、税理士に確認しておくとよいでしょう。
4 経営者として押さえておきたいポイント
経営者として意識しておきたいのは次の点です。
- 税理士からの仕訳の指示が、実際に帳簿へ反映されているかを確認しているか
手順自体は多くないため、指示どおりに処理されていれば大きな心配は不要です。 - 高額な資産の購入など、通常と異なる処理が必要になりそうな取引があれば、早めに共有しているか
消費税の仕訳は取引内容によって通常と異なる処理が必要になることがあるため、事前の共有が安心につながります。 - 税効果会計の要否について、税理士に確認したことがあるか
多くの中小企業には関係ありませんが、赤字になりそうなときは、赤字が続いてしまう前に一度確認しておくとよいでしょう。
5 まとめ
決算処理が終わり申告書ができあがった後も、その内容を帳簿に反映させる仕訳という最後の一手間が残っています。手順自体は多くないため、金額さえ正しく仕訳できれば大きく心配する必要はありませんが、決算の締めくくりとしてこの一手間があることを知っておくとよいでしょう。
これまでのコラムでは、さまざまな科目を取り上げ、「本来一致するはずの数字がズレていないか」という視点で決算を確認する方法をお伝えしてきました。決算作業の精度を上げ、内部管理を見直すきっかけとして、ぜひご活用ください。
本稿をご覧になって不明点や疑問点がありましたら、お気軽にオンライン個別税務相談にてご相談ください。



