銀行はあなたの会社をこう見ている——現預金から読み解く経営リスク

「決算書に問題はないはずなのに、融資の条件が想定より厳しかった」「取引先から急に支払条件を変えられた」——そんな経験はありませんか。

銀行や取引先は、損益計算書の利益だけでなく現預金の動きから独自に経営の実態を分析しています。

今回は、そのうち代表的な2つの分析手法をご紹介します。

  • ① 月平均売上と現預金残高の比較 → 資金繰りの余裕度を測る
  • ② 営業キャッシュフローの把握 → 本業での資金の生み出し方を見る

自社でも同じ目線で確認することで、銀行との交渉や取引先との関係に備えることができます。

1 月平均売上と現預金残高を比べる

何を見る分析か

年間の売上高を12で割った「月平均売上」と、決算書の現預金残高を比較します。

この分析が示すリスク

現預金残高が月平均売上を下回っている場合、売掛金の入金を待ちながら支払いをやりくりしている状態、つまり「綱渡りの資金繰り」が疑われます。

月末には売掛金の入金と買掛金の支払いが集中します。現預金が月平均売上を下回る会社は、この月末に資金が最も逼迫しやすい構造にあります。借入金の返済口座引落が重なれば、さらに状況は厳しくなります。

この分析から見えるリスクを整理すると、

  • 月平均売上 > 現預金 → 月末の支払いに余裕がない可能性
  • 借入返済が重なる  → 資金が最も逼迫するタイミングが集中

銀行・取引先の視点

銀行の融資担当者はこの比率を用いて「本当に返済能力があるか」を判断しています。また、大手企業が取引先の信用調査をする際にも、同様の視点で現預金残高を評価することがあります。

2 営業キャッシュフローを把握する

キャッシュフロー計算書とは

貸借対照表と損益計算書だけでは読み取れない「資金繰りの実態」を示す計算書です。現預金の増減をその要因別に3つの区分に分類します。上場企業では開示が義務付けられていますが、中小企業では作成していないところがほとんどです。ただし、2期分の決算書があれば簡便的に算出することができます。

  • 営業キャッシュフロー → 本業での資金の増減
  • 投資キャッシュフロー → 設備投資などの資金の増減
  • 財務キャッシュフロー → 借入・返済などの資金の増減

営業キャッシュフローが最重要

3つの区分の中で最も重要なのが「営業キャッシュフロー」です。これは通常の事業活動から生み出した(または消費した)現預金の増減を示します。

参考までに、投資キャッシュフローの一部(固定資産の取得・売却にともなう資金の動き)は、固定資産台帳の記録から以下のように対応づけられます。

固定資産の部の元帳にある取得・売却の記録が、キャッシュフロー計算書の収入・支出項目に対応し、投資キャッシュフローとして集計される流れを示す図
固定資産の取得は支出として、売却は収入として、それぞれキャッシュフロー計算書に反映されます

各状況が示すリスク

営業キャッシュフローの状況によって、見えてくるリスクが異なります。

  • 営業CF がマイナス → 本業で資金が流出している(滞留在庫・未回収売掛金・遊休資産が原因のことも)
  • 営業CF がプラスでも財務CF のマイナスが大きい → 返済負担が経営を圧迫
  • 投資CF のマイナスが大きい → 本業の資金創出を上回る投資をしている可能性

銀行はこれらの関係を複合的に確認しています。

3 「知らない」ことが最大のリスク

これら2つの分析は、決算書と少しの計算があれば自社でも確認できます。しかし実際には、自社がどう見られているかを知らないまま融資交渉や取引先との交渉に臨んでいる経営者がほとんどです。

問題のある数字について先に把握し、説明の準備ができていれば、「想定外」を減らすことができます。逆に、問題に気づかないまま交渉の場に臨むと、相手の質問に答えられず不利な状況を招くことがあります。

なお、現預金ベースの経営分析には今回ご紹介した以外にも手法があります。ただし、本コラムでご紹介するのはここまでとします。今回お伝えした2つの手法で把握できる情報だけでも、経営状態の実態に近づくための重要な糸口となります。

まとめ

月平均売上との比較と営業キャッシュフローの把握——この2つの分析を行うだけでも、銀行や取引先が自社をどう評価しているかが見えてきます。「知らない」まま交渉の場に出ることが、最も避けるべき経営リスクです。

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