マイホーム売却の税金 譲渡益と節税策を整理する
マイホームにまつわる税金についてお伝えするシリーズの第4回です。今回は、マイホームを譲渡(売却)した場合に課税される税金と、代表的な節税策についてお伝えします。マイホームの譲渡は、他の税金と比べても税負担が重くなりやすいテーマで、思わぬ金額の税金が発生することも少なくありません。
「譲渡」とは財産や権利などを他人に譲り渡すことをいい、有償・無償を問いません。したがって、マイホームの売却も譲渡に含まれます。タイトルに「売却」という言葉も入れているのは、「譲渡」になじみのない方にも分かりやすくするためです。
※本記事は令和8年7月時点で施行されている法令に基づいて執筆しております。ここで取り上げる制度の一部(3の(3))は期限のある特例のため、時期によって適用の可否が変わります。
1 譲渡と税金の関係
マイホームを譲渡したすべての方に関係する話です。マイホームを譲渡すると、次のような税金が関係してきます。
- 所得税・住民税 譲渡益に対して課税されます。詳しくは2以降でお伝えします。
- 固定資産税 1月1日(賦課期日)時点の所有者に課税されます。1月1日時点で登記が済んでいなくても、市町村が税額を決定する賦課決定日までに1月1日時点の所有者として登記されていれば、その人に課税されます。
- 登録免許税 住宅ローンの抵当権を抹消する場合には、土地・家屋合わせて2,000円が課税されます。これは借主(売主)が負担するケースが多いかと思います。
2 所得税・住民税の計算
マイホームを譲渡して利益が出た方に関係する話です。マイホームを譲渡した場合には、所得税と住民税を合わせて次の税金が課税されます。
(1)税額
- 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるマイホームを譲渡した場合 譲渡益×20.315%
- それ以外の場合 譲渡益×39.63%
(2)所有期間の判定
この「所有期間」は、実際に取得した日から譲渡した年の1月1日までの期間で判定します。たとえば令和2年1月1日に取得したマイホームを令和7年6月30日に譲渡した場合、所有期間は「5年未満」と判定されます。

これは、法律で「初日の翌日から起算する」「最後の日は起算日の前日に満了する」と定められているためです。1日でも判定日をまたぐと所有期間が変わるため、売却のタイミングには注意が必要です。
(3)譲渡益の計算
譲渡益は次のとおり計算します。
譲渡益=収入金額-取得費-譲渡費用
ここで、次の点に注意が必要です。
- 収入金額には、受け取った金銭だけでなく、債務免除などの経済的利益も含まれます(例外的なケースでは、特別に算出した「時価」が収入金額となります)。
- 取得費には、譲渡したマイホームの購入額や増改築・リフォーム代金などが含まれ、建物の経年劣化による価値の減少分を差し引きます(例外的なケースでは、特別に算出した金額が取得費となります)。
3 所得税・住民税の代表的な節税策
2の税額を軽減する代表的な節税策をご紹介します。節税策は大きく「圧縮」「税率軽減」「損失活用」の3つの方向性に分かれます。
(1)譲渡益を圧縮するもの(譲渡して利益が出た方向けです)
- 居住用財産の3,000万円特別控除(多くの方がまず検討すべき基本の制度です)
マイホームの譲渡益から3,000万円まで差し引くことができます。親族など近しい人への譲渡については適用除外です。また、過去3年以内に住宅ローン減税などの適用を受けていた場合には、その減税措置が取り消され、追加で税金が課される可能性があります。 - 収用等の特別控除(国・自治体による収用があった方向けです)
国・地方自治体などによってマイホームが強制的に収用された場合において、一定の要件を満たせば、マイホームの譲渡益から5,000万円まで差し引くことができます。 - マイホームの敷地が平成21年・22年に取得した土地である場合の1,000万円特別控除(該当する取得時期の方限定です)
マイホームの敷地の譲渡益から1,000万円まで差し引くことができます。この制度のメリットは、住宅ローン減税などの適用を受けていても取り消されないことです(親族など近しい人への譲渡は適用除外、家屋部分の譲渡益からは差し引けません)。
(2)税率を低くするもの(譲渡して利益が出た方向けです)
譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えるマイホームを譲渡した場合には、2の20.315%の税率が14.21%に軽減されます(軽減額は最大3,663,000円が限度)。この特例は(1)の特例と併用して適用を受けることができます。
(3)他の所得の所得税を軽減するもの(譲渡して損失が出た方向けです)
これまでは譲渡益が生じた場合の税金についてお伝えしましたが、譲渡益ではなく譲渡損が生じた場合には、事業所得・給与所得などの税金を軽減する特例があります。【重要】この特例には期限があり、令和8年1月1日から令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象です。
- 住宅ローンの借入をしてマイホームの買換えをした場合(住宅ローンを組んで住み替えた方向けです)
一定の要件を満たす場合には、譲渡した年において譲渡損失を使って事業所得や給与所得などの税金を軽減することができます。それでも譲渡損失が残る場合には、譲渡した年の翌年以後3年間にわたって事業所得や給与所得などの税金を軽減することができます。 - マイホームの譲渡により残った住宅ローンの額が譲渡による収入金額を上回る場合(買換えをせず、住宅ローンだけが残った方向けです)
一定の要件を満たす場合には、譲渡した年において譲渡損失(残った住宅ローンの額から収入金額を差し引いた額を限度)を使って事業所得や給与所得などの税金を軽減することができます。この譲渡損失が残る場合には、譲渡した年の翌年以後3年間にわたって事業所得や給与所得などの税金を軽減することができます。税金の軽減額は前者よりも小さくなります。
(4)取得日と譲渡年のタイミングに注意する
2でお伝えしたとおり、譲渡した年の1月1日時点における所有期間が5年を超える場合には税率が低くなります。ただし、マイホームの売買契約を締結して即日引き渡しがされることはなく、タイムラグがあるはずです。このタイムラグによって、取得日・譲渡日の考え方次第で所有期間の判定が変わることがあります。ただし専門的な判断が必要ですので、詳細は当事務所のオンライン個別税務相談にてご相談ください。
4 契約書がない場合(税額が大きく変わることがあります)
マイホームの購入時の契約書を紛失した、あるいはそもそも保管していなかった方に関係する話です。2・3でお伝えした税額計算や税額軽減のための数字や要件は、どのように確認するのでしょうか。
納税者が確定申告書に所得や納税額を記載しますが、それらの数字が正しいとは限りません。そこで税務署は、譲渡したマイホームの購入時の契約書や譲渡時の契約書などの関係書類を見て確認します。
マイホームの取得費は、主にマイホームの取得契約書を根拠に計算します。しかし、購入金額が分からないため取得費の計算ができない場合があります。その場合には、収入金額(マイホームの譲渡金額)の5%を取得費とします。これを「概算取得費」といいます。
しかし、収入金額の5%ではあまりに小さいという問題があります。たとえばマイホームを4,000万円で譲渡したら、概算取得費は200万円となります。大昔に取得したものでない限り、実際の取得費が200万円という少額にはならないはずです。つまり、概算取得費により譲渡益を計算すると、税負担が大きくなりやすいのです。
影響の大きさを具体的に見てみましょう。仮に実際の取得費が3,000万円だったとしても、契約書がなく概算取得費(200万円)で計算せざるを得ない場合、譲渡益は本来より2,800万円多く計算されてしまいます。税率が20.315%だとすると、それだけで500万円以上、余計に税金を払うことになりかねません。契約書1枚の有無で、これほどの差が生まれます。
それでは、実際の取得費はどうやって算出すればよいのでしょうか。答えは、購入時の価格を推定できる証拠を積み上げていくしかない、というのが実情です。その証拠の一つとして市街地価格指数を利用する方法が挙げられることがあります。これは、譲渡したマイホームの近辺の不動産価格について、取得時と譲渡時の2時点の数字を利用して近似値を算出するというものです。ただし、この方法単体では税務署に否認されるリスクが大きいので、あくまで他の証拠を補強する材料の一つと考えておいた方がよいでしょう。取得費が概算取得費とは1桁違う金額になる可能性もあるため、税負担の大幅な軽減につながることもありますが、証拠集めには専門的な判断が必要です。
5 まとめ
今回は、マイホームの譲渡により発生する税金と節税についてお伝えしました。マイホームの譲渡については多額の税負担が発生する可能性が大きいため、税理士が関与する機会が多いです。
もしマイホームの譲渡についてご自身で確定申告をしようとすると、想定外の税負担が発生することもあります。概算取得費が良い例かと思います。税理士に相談しなかったがために、数百万円の税金を余計に納付する可能性があります。
そうならないためにも、早め早め(できればマイホームの譲渡をする前)にオンライン個別税務相談にて当事務所にご相談ください。



