給与にまつわる負債 毎月サイクルと年次サイクルで残高の形が変わる

毎月の給与から天引きしている源泉所得税や社会保険料、正しく納付され、決算日の残高も合っていますか。

給与にまつわる負債(預り金・法定福利費など)は、日々の処理では見過ごされがちですが、考え方はシンプルです。「次に払うお金」を一時的に預かっているだけなので、決算日には「翌月に払う1か月分だけ」が残っているはずです(※労働保険料だけは年1回のサイクルで動くため例外です)。ここがズレているなら、過去のどこかで処理を誤っている可能性が高いといえます。

このコラムでは以下の3点を整理します。

  • 毎月サイクル(源泉所得税・住民税・社会保険料)の考え方
  • 年次サイクル(労働保険料)の考え方
  • 経営者として押さえておきたいポイント

1 毎月サイクル(源泉所得税・住民税・社会保険料)

毎月の給与を支払う際、従業員の給与から源泉所得税・住民税・社会保険料(健康保険・厚生年金)の従業員負担分を天引きします。これらは会社のお金ではなく、いったん会社が預かって、決まった期日にまとめて納付するものです。さらに社会保険料には、会社自身が負担する分(法定福利費)もあり、これも同じタイミングで一緒に納付します。

給与から天引きした源泉所得税・住民税・社会保険料の従業員負担分と、会社が負担する社会保険料(法定福利費)が、それぞれ翌月10日・翌月末日に納付される流れを示す図。
源泉所得税・住民税は翌月10日、社会保険料は翌月末日に、それぞれまとめて納付します

この仕組み上、決算日の預り金残高は「翌月に払う1か月分」だけが残っているはずです。それより多い、あるいは少ない場合は、過去のどこかで納付処理や記帳を誤っている可能性があります。

2 年次サイクル(労働保険料)

労働保険料は、他の科目のように毎月納付するものではなく、1年に1回、まとめて概算で納付し、翌年に実績で精算するという独特の仕組みになっています。

  • ①7/10ごろ 概算保険料の納付
    事業主負担分と従業員負担分をまとめて、会社がいったん立て替えて納付します。従業員負担分は「立替金」として計上します。
  • ②その後1年間 毎月の給与から従業員負担分を控除
    控除した分は立替金を直接減らすのではなく、「預り金労働保険料」として別に積み上がっていきます。
    ※立替金から従業員負担分を直接差し引く処理方法もありますが、本稿では①の立替金と②の預り金労働保険料を別々に管理し、③でまとめて相殺する処理方法を前提にしています。
  • ③翌年6/1~7/10 確定保険料の計算・精算
    前年4月~当年3月の実績をもとに確定保険料を計算し、積み上がった預り金労働保険料と①の立替金を相殺します。差額は当年の新しい概算保険料とあわせて納付します。
労働保険料の年次サイクルを示す図。概算保険料の納付で立替金を計上し、毎月の給与控除分は預り金労働保険料として別に積み上がり、翌年6月から7月にかけて両者を相殺したうえで確定保険料の差額精算と新年度の概算納付を行う。
労働保険料は1年サイクルで動き、立替金と預り金労働保険料は別々に管理され、翌年の精算時に相殺されます

そのため、決算日の残高も他の科目とは見方が異なります。1で説明した「翌月に払う1か月分だけが残っているはず」というルールは、労働保険料には当てはまりません。②の処理方法を前提にすると、決算日の残高は次のようになっているはずです。

  • 立替金 概算納付時の金額のまま
  • 預り金労働保険料 4月以降の控除累計

ここがズレている場合、月々の控除処理や精算の仕訳に誤りがある可能性があります。

3 経営者として押さえておきたいポイント

経営者として意識しておきたいのは次の点です。

  • 決算のたびに、給与関連の負債残高が「あるべき金額」と一致しているか確認しているか
    預り金や法定福利費の残高が、翌月分だけになっているかどうかを確認する機会があるかどうか。
  • 労働保険料だけ納付・精算のタイミングが違うことを認識しているか
    他の科目と同じ感覚で毎月チェックしようとすると、かえって分かりにくくなります。年1回の精算というリズムを踏まえて確認することが大切です。
  • 処理方法に迷ったときは、税理士と一緒に確認しているか
    特に労働保険料は仕訳のパターンが複数あるため、自社がどの方法によっているかを把握しておくと安心です。

4 まとめ

給与にまつわる負債は、源泉所得税・住民税・社会保険料のように毎月のサイクルで動くものと、労働保険料のように1年単位のサイクルで動くものに分かれます。決算日に確認したいのは、次の2点です。

  • 毎月サイクル 源泉所得税・住民税・社会保険料は「翌月に払う1か月分だけ」残っているか
  • 年次サイクル 労働保険料は「立替金+預り金労働保険料」の2本立てで、それぞれあるべき金額になっているか

ズレがあれば、それは過去の処理を見直すきっかけになります。決算のたびにこの2点を確認する習慣が、正確な決算につながります。

本稿をご覧になって不明点や疑問点がありましたら、お気軽にオンライン個別税務相談にてご相談ください。

継続的なサポートをご希望の方へ

単発のご相談だけでなく、記帳チェック・税務判断・決算申告まで含めた継続的なサポートをご希望の方は、オンライン顧問サービスをご覧ください。

オンライン顧問サービスを見る